10年後には自動車整備業が消える?
少子高齢化の影響を受けて自動車ユーザーが減少している一方で、これに関連する自動車整備業も年々縮小していると言われています。
“若者の車離れ”が叫ばれて久しい中ですが、どうやら市場が小さくなる原因はほかにもあるようです。
自動車整備業の市場は、どうして縮小しているのでしょうか。また、その対策方法はあるのでしょうか。
本稿では、自動車整備業の今後についてご紹介します。業界全体が将来性に不安がある中で、整備工場として生き残るための対策を検討してみたいと思います。
■自動車整備業の規模が縮小している理由
時代が変化していく中で、数々の職種が10年後にはなくなると予想されています。
自動車整備業は完全になくなる業種とは言えないものの、自動車ユーザーが全体的に減少している傾向にあることから、今後の縮小は免れないと考えられている状況です。
ユーザー減少のほかにも、自動車整備業の縮小につながる要因は多くあります。
以下でその理由についてお伝えしていきます。
たとえば、ユーザーが車体についた傷を直さなくなっていることは、理由のうちのひとつです。
乗車さえできれば傷があっても気にしないという考え方や、ふたたび傷をつける可能性があるのに高額な修理費用を負担したくないという考え方から、自動車を修理しないケースも少なくありません。
傷がついたままの自動車に乗り続けるのが、それほど珍しくなくなってきたということです。
また、電気自動車の登場も、将来的には自動車整備業の縮小につながると考えられています。
従来の自動車と異なり、電気自動車の整備ではできることが限られてくるのがその理由です。
新技術の登場により受ける影響は、これだけではありません。自動運転や安全装置が普及し、さらに技術が発展するにつれて、自動車に傷がつくこと自体が減ってくる可能性があります。
すると、同時に自動車を修理する機会も減ることになるでしょう。
さらには、全体的に整備工場自体が減ってきているため、自動車に傷がついたときに整備工場へ依頼するイメージが、ユーザーの中で薄れてきているのも要因のひとつです。
自動車整備士を志望する若者が激減し、自動車整備に関連する大学や専門学校への進学率が低迷しています。
整備要員の高齢化が進んでいることから、多数の自動車整備工場が、後継者問題に直面しています。もはや、自動車整備業がユーザーにとって身近な存在ではなくなってきているということです。
これらの理由から、自動車整備業はしだいに縮小を余儀なくされている状況にあると言えるでしょう。
業界全体が厳しい流れにある中、自動車整備業として生き残るためには、これまでとは異なる視点で生存戦略に乗り出さなくてはなりません。
■整備工場の生存戦略|整備+αの価値づくり
自動車整備業が生き残るための手段として、自動車の整備に加えて別の事業を展開するという切り口があります。
事業が多角化することでリスクヘッジにもなると考えられるため、長い目で見てぜひ展開を検討してみましょう。
ここでは、自動車整備業が従来の事業に加えて展開する事業として、よく選ばれているものをご紹介していきます。
□中古車販売事業
中古車販売事業では、中古車の購入を希望しているユーザーへ、自動車を販売します。
ユーザーの要望に適した1台を提案する際、長年にわたり自動車業界で培ってきた経験が生かされる業種です。
ユーザーが求める中古車の品質や、希望する価格帯、ライフスタイルにマッチした商品を提案しましょう。
丁寧にクリーニングとメンテナンスが施された中古車は、依然としてニーズが高いと言われています。
加えて、自動車の購入時に必要な手続きや税金についての知識を生かして、購入するユーザーのサポートが行えると好ましいと言えます。
中古車販売事業を展開するメリットには、自動車を購入したユーザーに、次の車検で自動車整備工場を利用してもらいやすくなるという点が挙げられます。
購入した店舗で車検を受けられると、ユーザーも安心感が得られるはずです。また、数年後にはユーザーが購入した自動車の買い取りにつながる可能性もあります。
長い目で見て生き残るために有効な事業のひとつです。
□カーリース事業
カーリース事業では、ユーザーに定額料金を支払ってもらうことで自動車を利用してもらうサービスを提供します。
一般的に自動車を購入する場合とは異なり、無理のない定額料金で自動車を利用できることから、ユーザーの心理的ハードルがより低くなるのがカーリースの特徴です。
リースの台数や利用目的は、ユーザーによって大きく変わります。そのため、ユーザーのニーズに合わせたサービスのカスタマイズが必要です。
一人ひとりのユーザーに丁寧にヒアリングを行うにあたり、自動車の利用シーンにまつわる豊富な経験と知識が求められます。
ユーザーとカーリース契約を結ぶと、契約年数分は確実に車検を担当できるというメリットがあります。
新事業として展開することで、自動車整備工場とユーザーとのつながりをより強固にできると言えるでしょう。
また、リース期間が終了した自動車は、自社の整備工場でメンテナンスをし続けた上質な下取り車として、大切な財産になります。ユーザーと自社の双方に大きなメリットがある事業です。
□自動車買取事業
自動車買取事業では、ユーザーが所有する中古車を査定し、買い取りを行います。多数のユーザーがカーライフにおいて自動車の乗り換えを選択している現在、市場における買取事業の重要性が高まりつつあります。
少しでも高い査定金額での買い取りを求めるユーザーにとって、買取専門の業者を利用するほうがメリットを実感しやすいのです。
中古車の査定および買い取りには、自動車にまつわる幅広い知識が求められます。
長年にわたり自動車業界に携わり身につけた専門知識を生かして、新規事業を立ち上げてみてはいかがでしょうか。
自動車買取事業は、比較的取り組みやすい業種である点がメリットです。
自動車買取はカーライフの一貫として引き続き需要が見込まれています。
主要である自動車整備工場から展開しやすいと言われている業種ですから、ぜひ展開を検討してみて下さい。
整備工場との相乗効果もあるため、生存戦略としておすすめできる業種です。
まとめ
自動車整備業は、さまざまな原因によって縮小の一途を辿りつつあります。
自動車ユーザーの減少、車の傷を直さない習慣、新技術の登場、そして整備工場の人材不足はその一例です。
さらには、電気自動車の普及によって、自動車整備業に新たな技術の導入が求められる一方で、そのノウハウや対応できる人材の育成が追いついていないという現状もあります。
このような状況から、業界全体が危機的な状況に陥っているのです。
これから到来する大きな危機に備えて、今から自動車整備工場ができるのは、将来を見据えて事業を展開することだと言えます。
中古車販売事業・カーリース事業・自動車買取事業は、主要事業である自動車整備業と合わせて展開しやすいと考えられています。
今後も業界で生き残るための生存戦略として、新規事業の展開を検討してみましょう。
参考にさせて頂いた記事URL
http://www.mlit.go.jp/common/001058685.pdf
http://www.hiromaz.co.jp/recruit/works/car-related/
http://www.toyota-fl.co.jp/recruit/projrctinfo.html
http://www.nielsen.com/content/dam/nielsenglobal/jp/docs/report/2014/JP Nielsen Global Automotive Demand Report April 2014 FINALpdf.pdf
https://toyota.jp/ucar_search/dc/form
https://www.jucda.or.jp/hanbaishi/
http://www.jpuc.or.jp/about/